TORINO 2006
2006 OLYMPIC WINTER GAMES
Alpine Skiing
Men's Slalom, Sestriere, 25,Feb,2006
男子回転、セストリエール、2006年2月25日
ベンジャミン・ライヒ(AUT)2冠、オーストリア表彰台独占
皆川賢太郎(アルビレックス新潟)・4位、湯浅直樹(北海道東海大)・7位
1st / Benjamin Raich(AUT)
4th tie / Kentaro Minagawa(JPN)
2nd / Reinfried Herbst(AUT) 3rd / Reiner Schoenferder(AUT)
7th / Naoki Yuasa(JPN) DNF / Akira Sasaki(JPN)

 大会16日目、アルペンスキー最後の男子スラロームがセストリエールで行なわれた。1本目午後3時、2本目午後6時半スタートの変則ナイター開催である。

 児玉アルペンが充分にその成果を発揮したオリンピックだった。皆川賢太郎(アルビレックス新潟)が4位、湯浅直樹(北海道東海大)が7位と、オリンピック史上初の一桁入賞が二人。日本アルペンの輝かしい1ページが記録されたレースだった。

 皆川賢太郎は、乾坤一擲の大勝負で11番スタートから1本目トップに7/100秒差の3位を確保、2本目は3位に入ったライナー・シェンフェルダー(AUT)にわずか3/100秒及ばず、トータル4位タイで惜しくもメダルを逃した。
 オリンピック、世界選手権を通して4位という成績は、猪谷千春さん(現IOC副会長)の、1956年、コルチナ・ダンペッツォ(ITA)オリンピックのスラローム・2位、1958年、バドガスタイン(AUT)の世界選手権のスラローム・3位、同じくコンビ・4位に次ぐ成績である。ちなみにその次の一桁成績となると、1978年、ガルミッシュ・パルテンキルヘン(GER)世界選手権で海和俊宏選手が出したスラローム・7位という成績がある。

 湯浅直樹は1本目39番スタートから17位のタイムをたたき出し、2本目は3番目のタイムをマーク、初めてのオリンピックでトータル7位入賞を果たした。日本人二人が同時に一桁入賞は史上初の快挙だ。

 期待の佐々木明(ガーラ湯沢)は1本目トップにジャスト1秒遅れの8位タイだったが、2本目上部で片足反則を犯しコースアウト。あっけない幕切れだった。だが攻めた上での失敗だから致し方なかろう。

 オリンピックが終わった時点での日本チームのWCSLポイントは、佐々木明・10位、皆川賢太郎・11位、湯浅直樹・29位。またワールドカップランキングは佐々木・8位、皆川・11位、湯浅・36位。志賀高原の2連戦次第で湯浅選手の最終戦参加が可能になる。

 優勝はオーストリアのベンジャミン・ライヒ(27歳)。1本目にベストタイムをマークし、2本目もトップのタイムで、大回転に続いて今大会2個目の金メダルを獲得した。
 今季ワールドカップのスラロームでは中々勝てなかったが、ぴったりとオリンピックに照準を合わせて来て栄冠を手にした。とくに2回目、皆が手こずったクロアチアのコーチによる変則的なセットにも動ずることなく、持ち前の華麗なスラロームで、優雅ささえ感じさせる滑りでゴール。見事なスラロームだった。

 2位には遅れてきた青年、ラインフリード・ヘルブスト(27歳)。1本目7位からのランクアップである。今季はオーストリアのナショナルチームから外され、自費でワールドカップを転戦して好成績を収めオリンピック代表に選出された。早くから才能は注目されていたが、度重なる怪我との付き合いでここまで苦労してきたが、オリンピックの大舞台で才能を開花させた。

 3位にこれが最後のオリンピックとなるであろう、ライナー・シェンフェルダー(28歳)。1本目の5位からのランクアップ。コンビの銅メダルに続き今大会2個目の銅メダルである。レクザムブーツがまたしても表彰台に上がった。

 皆川と同じ4位タイにスウェーデンの新鋭、アンドレ・ミーラー(22歳)。6位にコンビで銀メダルのクロアチアのイヴィツァ・コステリッチ(26歳)が入った。

DNF / Giorgio Rocca(ITA) DQ / Kalle Palander(FIN) DQ / Ted Ligety(USA)

 ワールドカップで5連勝を飾るなど、メダルがもっとも期待されていた地元イタリアのジョルジオ・ロッカ(30歳)は1本目、わずか34秒でスキーを交差させて転倒、イタリア国民の期待を見事に裏切った。これがプレッシャーというやつだろう。イタリアはアルペンスキーではついにメダルなしに終わった。

 1本目、トップのベンジャミン・ライヒに1/100秒差で2位に付けていたフィンランドのカレ・パランダー(28歳)は2本目、上部に於ける片足反則で失格した。自分では分かっていながら最後まで滑ってゴールした。気持ちは分かるが、ワールドカップではペナルティものである。

 またアメリカチームもこのスラロームでは不運な結果に終わった。ボーディ・ミラー(28歳)は1本目に片足反則でコースアウト。ボーディはついに今大会はメダルなしに終わった。コンビで金メダルを取ったテッド・リゲティ(21歳)も1本目は2位のタイムでゴールしたが、上部に於ける片足反則が判明して失格した。

 もう一人の日本選手。44番でスタートした生田康宏(東京美装)は合計タイム2分23秒28で、ゴールした中では最下位の47位だった。このレース、97人がエントリーしたが、ゴールしたのは47人だった。

 トリノ・オリンピックは終わった。スキー競技では日本チームはついにメダルなしに終わった。皆川賢太郎の4位、湯浅直樹の7位、上村愛子(北野建設)の女子モーグルの5位、岡部孝信(雪印)のジャンプ・ラージヒルの8位、ジャンプ・団体の6位、ノルディック複合・団体の6位、以上がスキー競技に於ける今大会8位以内入賞の全てである。アルペン男子は非常にレベルの高い試合をしたが、他の種目は出場資格を問われかねない情けない結果に終わったと言えよう。選手の資質の問題か、あるいはフロントの問題か。いずれにしても、成績不振の責任はフロントが取るというのがこの世界の常識である。SAJはフロントの抜本的な改革が必要であろう。

 アルペン・スラローム陣は、一見(いちげん)のマスコミ陣のいないところで、ゆっくりと勝ってくれればそれで良い。オリンピックだけがレースじゃないし、オリンピックは4年後にも、8年後にもある。

見谷昌禧のプロフェッショナルの視点・オリンピック篇
 最後に来てスキー強国オーストリアチームが爆発した。1位から3位まで表彰台を独占した。また50年ぶりのメダル獲得が期待された日本チームは惜しくも皆川選手の4位、さらに湯浅選手が7位、佐々木選手2本目のスタート直後でコースアウト。だが期待に反しない好成績である。

 コース状況
 一枚バーンで、人工的に三つのウェーブが設けられていた。旗門構成もオーソドックスだった。キーポイントは、各斜面の変化する部分の第1双旗目への入射角を正確に狙うことと、各オープンテレグラムのインターバルと落差との構成の違いを見抜くことであった。特徴的であったのは、2本目の前半部にセットされたストレート・フラッシュで4双旗を組み合わせた構成。ほとんどは3双旗の組み合わせでセットされる。ワンターン多いために、スピードが出ることと、リズム変化への対応能力が試された。

 レース展開

 オリンピックの回転レースに魔物が宿っていた。ビブ1番、イタリアの星、ジョルジオ・ロッカ選手がコース中盤でのオープンゲート、右ターンの後半で左スキーの抜けが悪く、体が前屈みになりコースアウト。ワールドカップ5連勝中、どんな状況にも対応して勝ち抜いてきたあのロッカ選手がミスを犯すとは。運も実力の内、運に恵まれていなかった。コンビの回転レースでベストタイムを出したアメリカのテッド・リゲティ選手。1本目中半のヘヤピンゲートでミス。優勝候補の筆頭に上げていたのであるが、プレッシャーに負けた。パランダーは1本目2位、2本目の第1双旗でポールを跨いで万事休す。佐々木選手、1本目8位、2本目は3双旗でポールを跨いだ。

 1位、ベンジャミン・ライヒ
 2本ともベストタイムの完全優勝。テクニック的には、各ターンで両腕を前に出し、両ストックを付いてターンのキッカケとするダブルストックを使ってのターンを駆使していた。両スキーのインエッジで雪面をキャッチし、ターンの内ストックでターンのキッカケとし、さらにターンの外ストック(腕)を前に出して次のターンの先行運動の動きをリードしていた。もう一つの利点は、上体が左右に動かないために目線が安定し、ターンの入射角を正確に定めることを可能にする。とにかく無駄な動きをしないので、滑りはスムーズに見え、そして速い。

 2位、ラインフィールド・ヘルブスト
 チームで一番調子を上げてきて念願のオリンピック出場を得た選手。幸運児がチームに幸運を招いた。
 
 3位、ライナー・シェンフェルダー
 最後のオリンピックで粘り抜いてメダルを獲得。日本製のブーツでは初めての快挙。

 惜しくも4位、皆川選手はメダルへあと一歩届かなかったが、歴史的にも大変な快挙だ。今シーズン初めて第1シード入りしてすぐに4位を確保した。それもオリンピックでである。湯浅選手も7位に入ったことは、日本チームが世界のトップチームの仲間入りをした証拠だ。
 さて、皆川選手の滑りであるが、ライヒ選手の特長と同じことが言える。各ターンの始動で常に先行運動を使い、次のターンの方向を正確に狙ってタイムを稼いだ。中半まで、ライヒに2/100秒勝っていたが、後半の緩斜面でタイムを離され逆転された。この部分を課題にして練習をしてきたが、さらに練習が必要である。この課題を克服したときにメダルを獲得することが出来る。オリンピック前に、オフセットの大きな旗門で、両ストックを使ってジャンプターン気味にスキーを素早く次のターン方向に廻し込む技術を習得した結果が出た。この技術の効果をして4位を獲得したと言っても過言ではない。

 湯浅選手は、スタート順に関係なく速く滑る技術を持っている。誰よりもインサイドポールの近くを滑り抜けることが出来る技術を持っている。その証拠に1本目ビブ39から17番、2本目14番にスタートして3番目のタイムを出して7位入賞。今後日本チームで第1シードに3人が入ることも夢ではない。

Rank Bib Name YoB Nat. 1st Run 2nd Run Total Time
 1  6 RAICH Benjamin  1978  AUT   53.37  49.77  1:43.14
 2  14 HERBST Reinfried  1978  AUT   53.55  50.42  1:43.97
 3  4 SCHOENFELDER Rainer  1977  AUT   54.03  50.12  1:44.15
 4  11 MINAGAWA Kentaro  1977  JPN   53.44  50.74  1:44.18
 4  5 MYHRER Andre  1983  SWE   53.95  50.23  1:44.18
 6  13 KOSTELIC Ivica  1979  CRO   54.43  50.02  1:44.45
 7  39 YUASA Naoki  1983  JPN   54.76  49.81  1:44.57
 8  23 BROLENIUS Johan  1977  SWE   54.37  50.44  1:44.81
 9  15 GRANDI Thomas  1972  CAN   53.64  51.20  1:44.84
 10  25 HANSSON Martin  1975  SWE   54.50  50.74  1:45.24
 11  24 BOURGEAT Pierrick  1976  FRA   54.45  51.03  1:45.48
 12  38 COCHRAN James  1981  USA   54.49  51.19  1:45.68
 13  34 GRUBELNIK Drago  1976  SLO   54.87  50.82  1:45.69
 14  50 BERTHOD Marc  1983  SUI   56.22  49.78  1:46.00
 15  22 ZURBRIGGEN Silvan  1981  SUI   55.17  50.93  1:46.10
 16  33 BAXTER Alain  1973  GBR   54.93  51.22  1:46.15
 17  21 JANYK Michael  1982  CAN   55.32  50.87  1:46.19
 18  30 KNIGHT Chip  1975  USA   54.71  51.55  1:46.26
 19  31 VAJDIC Bernard  1980  SLO   55.16  51.27  1:46.43
 20  47 BAXTER Noel  1981  GBR   56.07  51.15  1:47.22
 21  49 VRABLIK Martin  1982  CZE   56.01  51.39  1:47.40
 22  45 BJOERGVINSSON Bjoergvin  1980  ISL   57.07  54.16  1:51.23
 23  56 DIMITRIADIS Vassilis  1978  GRE   57.38  54.00  1:51.38
 24  71 BABUSIAK Jaroslav  1984  SVK   58.51  53.55  1:52.06
 25  57 GEORGIEV Stefan  1977  BUL   58.30  54.25  1:52.55
 26  73 HEIMSCHILD Ivan  1980  SVK   59.67  54.31  1:53.98
 27  74 VIDOSA Roger  1984  AND   59.87  54.16  1:54.03
 28  52 OSKARSSON Kristjan Uni  1984  ISL   58.92  55.78  1:54.70
 29  69 KONOVALOV Anton  1985  RUS   59.53  55.18  1:54.71
 30  75 SCHAFFERER Marco  1984  BIH   1:01.11  56.06  1:57.17
 47  44 IKUTA Yasuhiro  1979  JPN   1:15.19  1:08.09  2:23.28

Official Result